よまそく特別編『チーム暗殺専科・前編』

ネアポリス刑務所の一室。
そこは人為的な別空間である。本来ならば囚人が服役するための檻なのだがポルポの持つ力がそこを安全な場所にしている。もっともパッショーネの幹部であるポルポに真正面から逆らおうという命知らずはこの街にはいない。
その1室には本来なら流れるはずのないクラシックの曲が流れている。刑務所の連中はそれをあえて無視する。これもポルポの権力によるものだ。
「どうだねブチャラティ。ドヴォルザークの『新世界交響曲』だ。今流れているのは第4楽章だ。美しい旋律ではないかね。たまには君もクラッシクを聞くといい。」
パッショーネの幹部ポルポは上機嫌で若い来訪者、部下であるブチャラティに言う。ブチャラティは儀礼的にチェコの音楽家の曲に耳を少し傾けた。美しい旋律だ。確かにポルポの相手をするよりは音楽を鑑賞していたほうが良いだろう。だが仕事は仕事だ。
「ポルポさん、先月の報告書類です」
それには答えずブチャラティは儀礼的に書類を机に出す。
「ブフー。 書類はあとで読むとして・・・全体的にどうだね?私は儲かっているかね。」
「はい」
ブチャラティは答えた。ポルポの経営はうまくいっている。そうでなければ億単位の金が彼に転がり込むはずがない。ポルポはずぼらなようでいて大事なところはこまかく抑えるしたたかさを持っているのだ。そうでなければ幹部の役職を手に入れることはない。特に彼はスタンド使い同士の争いに関して・・・
ブチャラティの考えとはおかまいなくポルポが訊ねる。
「よろしい。ところでブチャラティ、例の計画の進み具合はどうかね?」
「・・・順調です。ただ人員が不足しています。司会進行役が見つかっていません。」
そうだ。
予定どうりにことはすすみ、アレはすでに完成してある。パッショーネ構成員にはパンフレットを郵送、会場の設営もとどこおりがない。
気が滅入るが、そんなくだらないことができるのも彼がパッショーネの幹部だからだ。幸いなことに彼のチームは参加しない。いやできないことにしてある。
「今回ばかりは君のチームだけでは人数が足りないみたいだなあ・・・・・それについては心当たりがあるから心配しなくていい。ところでアレはいつもってこれるかね。実物を私の目で確認したい」
そうだ。
問題はアレなのだ。今はアバッキオとナランチャが警護している。二人とも何を警備しているかは知らない。
知ったら大変なことになる。

さて暗殺チームというと・・・
「何、第1回ポルポ主催クイズ大会?相変わらずくだらないものを考えているなあのデブは?」
その話をリゾットから聞いたホルマジオは興味なさそうにソファに座り込んで言い放った。
「目的はパッショーネ構成員の啓蒙だそうだ。」
淡々とリゾットは言うと送られてきたパンフレットをそばにいたイルーゾォにみせる。コーヒーを飲んでいたイルーゾォはとりあえず受け取った。パンフレットにはむさくるしいポルポの顔が映っている。
パンフレットの製作者はもう少しまともな人選はできなかったのだろうか?

近年、パッショーネの構成員は低年齢化が進み若者たちが増えている。
しかし最近の若い者は目先の利益ばかりを追求し真実を知ろうとはしない。
真実にいたる道は遠く険しいがそれによって得られるものは大きい。
このことを憂慮し私は『第1回パッショーネチーム対抗クイズ大会』を実施する。
諸君らもこれを機会に知識を吸収し仕事や実生活に役立てて欲しい。

イルーゾォはひととおり読み上げるとパンフレットをホルマジオに放る。立派なことが書いてあるように思えるがポルポのいうことは怪しい。ホルマジオは見ずにリゾットに返した。
「ようは、勉強しろってことか?食い物と金にしか興味のないやつに言われたくないぜ。だいたい、ヤツのことだから自分とこのチームを出して賞金を掠め取るつもりじゃねえか?」
パンフレットを広げながらホルマジオが興味なさそうに言う。仕方がない。暗殺チームは以前、ポルポ主催の自作映画コンテストで痛い目にあっているのだ。やる気を起こせというのも無理な話である。だが、リゾットがそれを否定する。
「そうでもない。情報によるとポルポの所属するチームは出場しない。そのうえ、あのケチなポルポが今回の優勝商品のためかなりの金額を用意しているらしいのがわかった。あのポルポが組織のために金を使うということ自体が驚きだが・・・」
「その情報は確かなのか?」
いつの間に来たのかメローネが聞く。リゾットは肯定する。暗殺チームの情報網は組織内でトップクラスである。
「確かだ。ポルポのチームにそういった動きはない。むしろ会場の手配やイベント告知でチーム全員が参加できない状態だ。それをうけて組織内のいくつかのチームが参加する動きが出ている。ただし参加できるのは1チーム2名までだ。」
確かにパンフレットの参加条件には「パッショーネに所属するチームにつき2名」と明記されている。
「賞金はいくらなんだ?」
メローネがカフェティエラからコーヒーを注ぎながら言う。
「あのデブのことだからせいぜい図書券じゃねえのか?」
ホルマジオはまだその情報を信用しきれていないようだ。
「賞金ではなくて商品だ。仔細はわからないが500万円相当ということだ。」
「なんだ?車か?」
「ポルポには似合わないな。」
イルーゾォの質問にメローネが感想を付け足す。確かにトラックでもないとあの巨体は輸送できないろう。車だろうがなんだろうがとりあえず金になるのなら何であろうと文句はない。
「その話、のったぜ!」
間の悪いところにチームきっての武闘派プロシュートとギアッチョが来てしまった。
「最近退屈していたからな。どこのどいつが相手だ?」
話半分に聞いていたギアッチョが宣言する。ようは暇なのだろう。何をするかは問題ではないようだ。
だがそれをリゾットが止める。
「今回の任務はお前には不向きだ。この任務を遂行するには慎重さと忍耐力、そして知識が求められる。」
「なんだって?」」
「今回お前はは留守番だ。ポルポの開催するクイズ大会をぶち壊せというのならお前を送るが優勝するとなるとまた話は別だ。今回は優勝しなくてはならない。こちらからは2名しかだせないからな。」
早い話、キレるから駄目だということなのだが不思議なことに漢字熟語を並べるとなぜか納得してしまう。さすがのギアッチョもクイズ大会で優勝しろといわれればぐうの音もでない。
その点、プロシュートは冷静である。
「その人選はまかせる。しかしそれよりも他のチームに顔を知られるのはまずいんじゃないか?」
あいかわらず仕事一直線のプロシュートはもっともなことを言う。リゾットは彼の意見を述べた。
「参加者全員がパッショーネの構成員だから問題はない。何をしているかは誰も気にも止めないだろうからな。むしろ現在の組織の状況を知るという意味ではいい機会だ。そして今回はメローネとイルーゾォにやらせる。」
ちょっと驚いた顔をして二人はリゾットを見やる。
リゾットとしては消去法の結果なのだ。
ギアッチョとプロシュートは本人も認める武闘派でこういう「待つ」のは苦手だ。そもそもこの二人では棘がありすぎる。大会が始まる前に一騒動を起こして失格になる可能性は高い。いや、絶対にそうなる。
ペッシは気がつくがまだ半人前だ。本番で力をだせない。
ホルマジオは気分にムラがある。能力は高いのだが基本的にこういう地道なのは苦手だ。
そうして残ったのがメローネとイルーゾォだ。
イルーゾォは特徴がないのが特徴だ。性格的に一番まともで影が薄いが欠点らしい欠点はない。
メローネは性癖に問題はあるが理性派に分類される。この手のものなら頼りになる。
「どちらにせよ。仕事のない俺たちにとってこの話はありがたい。500万があればしばらくはまともな飯が食える」
ここのところ仕事はめっきりない。したがって金はない。とはいえ素直に節約してくれるようなやつらではないので徐々にだが生活が苦しくなってきている。最近は「飯がマズイ、もっとうまいもの食わせろ!」などと贅沢を言い出す。
「しかし優勝したらの話だろ?2位以下には商品がでないぜ。」
そう、優勝賞金は500万のせいか残る2位以下には商品がないのだ。
「策はある。単純だがそれなりに効果はある。あるのだ単純に知識を増やす点がな。今回は出題範囲が限られている。これを読め」
「なんだこの漫画は?」
リゾットが仕入れてきたのは古本屋で入手した日本の漫画本だ。
「これが出題範囲だ。クイズはここから出題される。」
確かにパンフレットの隅に出題範囲としてこの漫画が数冊写真で載っている。
「しかし、これってクイズじゃないんじゃあ・・・」
「というか実生活で役に立つのか?」
もっともな答えである。真実とは程遠いような気がする。パンフレットの口上は一体何なのだろうか?
「全員必ず一読するように!」
メローネ、イルーゾォとついでにこの場にいないペッシをのぞく皆が顔を見合わす。
「え、俺たちもかよ?」
「当然だ。『ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために』。今の反応から見ると諸君らはこの大会を対岸の火と見過ごそうとしているのではないのか?否、それは重大な過ちである。真の勝利はチームが一丸となって初めて得ることができるのである!」
なんだかどこぞの独裁者みたいなことをのたまうリゾット先生。
「勝負は1週間後!それまでにこの漫画をマスターするのだ。1週間後の大会当日が我々にとってもっとも長い日となる!」
(・・・・・・・・・絶対これは何か起きる。)
ハイテンションなリゾットを前に暗殺チームは不吉な予感を感じずにはいられないのであった。

1週間が流れる。イタリアの大学生並みに猛勉強をする暗殺チーム一同。部屋には「絶対優勝!」だとか年表や人物、雑学がところせましと張られている。まさしく受験風景である。
そうして怒涛のような1週間が過ぎる。
途中、ギアッチョが暴れたり、ホルマジオが脱走を企てるなどといったエピソードもあるのだが長くなるので割愛する。

そして大会当日、暗殺チームは朝から躓いていた。
「なんだとイルーゾォが風邪をひいた?」
「ここのところ徹夜続きだったからな。」
淡々とメローネが事実を述べる。実際メンバーのほとんどが最近寝不足気味なのだ。最初の1日はそれなりに各人、感心したりおもしろがったりしてたものだが次第に飽きてくる。リゾットが、プロシュートが鼓舞してどうにか1週間を乗り越えたのだった。
「とりあえず応急処置だ。薬がない?ペッシ風邪薬を買って来い。ギアッチョ?寝かせたままでいい。話がややこしくなる。」
「リゾットよォー、体温計やっぱりないぜ。ここんところ誰も風邪なんかひかなかったからなあ〜。ただの温度計ならあったけどよ。」
「ホルマジオそれはもういい。それよりも出発時間を20分遅らせる。」
もっとも予め早く会場に着く予定だったから問題はない。そういったところでとうの張本人イルーゾォがふらふらとした足取りで来る。
「おいおい、大丈夫なのか?」
ホルマジオが声をかける。
「我慢するのは勝手だが足手まといになられるのは困る。」
プロシュート相変わらず容赦がない。イルーゾォは怯まない。
「大丈夫だ。この程度の風邪・・・・・・一つや二つひいたところでなんともない。」
風邪を一つ二つと数えるかはともかく感動するかは微妙な線である。今の台詞、ギアッチョがいたら暴れている確率は高い。
リゾットが判を押す。
「大会へはメローネとイルーゾォの名前で申し込んでいるからな。ここへきて脱落というのも心残りだろう。心配するな。骨は拾ってやる。存分に戦え。敢闘精神こそ勝利を呼ぶ!」
だがこれがのちのちに大惨事を引き起こすとはリゾットもこの時点では予測できなかった。

「しかしティッツアーノ、うまくいくと思うか?」
控え室で最終チェックをしていたティッツアーノはやる気のなさげな相棒をたしなめる。
「前に暗殺チームのことでドジを踏みましたからね。これぐらいはしないとボスから降格処分がでるかもしれないですよ。」
「わかってる。しかし、ポルポのやつなぜ俺たちにこんなことを・・・」
「知らないですよ。ボスがこの間の埋め合わせということで特に指示をしたのですから。ポルポの部下たちが準備をすませてくれています。あとは私たちしだい。」
そうポルポのいう心当たりとはスクアーロとティッツアーノのことだ。もっともポルポは詳細は知らない。ボス直属の親衛隊がへまをやらかしたというのを聞いただけである。今回のイベントで人員が不足しているということをボスに報告したところ前回の汚名返上のため二人が派遣されたということである。彼らの役割は司会進行役である。
「正直言うと嫌な予感がする。だいたいなんでポルポのチームが出ていない?」
鏡をみながらスクアーロが独白する。たしかにおかしな成り行きだ。本来ならポルポのチームが運営するのが筋なのだ。それがなんやかんやと人手不足ということで借り出されている。
(それは私もですよ。正直言うとこの間の任務より難しいかもしれない。)
ティッツアーのはさすがにそれは飲み込んだ。あまり不安にしてもいい結果は得られない。
そしてこの場合それはまさしく当たっていた。

「警備員に金属探知機か・・・なかなか厳重じゃねえか。」
奇妙な髪型。髪を後頭部で渦を巻くように、しいて言うならカタツムリの殻みたいな髪をした男が言う。
会場の入り口ではポルポの雇った警備員がボディチェックをおこなっている。すでに6人ばかりが「検挙」されている。押収されたものとしては小型のレシーバーに小型電子手帳、カンニングペーパーから麻酔銃や下剤といったものまで発見されまるでスパイ映画である。
相棒が口を開く。
「だれでも考えることは同じだからな。この警備体制・・・・・・情報どうりポルポは今回の商品に金をかけている。500万という話は本当のようだ。それだけでもやる気がムンムン湧いてくるぜ。」
もう一人の相棒がノリノリで言う。こっちは髪をつんつんに尖らせている。この二人はローマに在住するパッショーネ構成員サーレーとズッケェロだ。
「しかし500万円でよくそこまでやる気になるな。車1台買ったらそれでおしまいだぜ。家も買えやしねえ。3億ぐらいならやる気をだすけどよ〜」
へっへっへ〜と緊張感なさげに笑う。今回、ズッケェロはやる気がない。
「たしかに500万円程度ならそれで終わりだろう。それを元手に長期的なプランを練る。俺の知り合いがいい物件を紹介してくれる。」
「それでのしあがるってか?もうちょっと夢のある金額なら俺もやるけどよ。」
500万という金額ではいまいちやる気が起こらないようである。ある意味ズッケェロ、夢を追う男である。それはともかくサーレーは話を続ける。
「優勝はする。必ずな。すでに話はつけてある。賞金の500万はそれに使う。いいか、この冬場確実に値上がりのする物件といえば・・・・・・『灯油』だ。どこの家庭でも石油ファンヒーターに灯油を使う。あたりまえだがな。・・・・・・最初はたいした利益にならないかもしれないが・・・いずれそれを元手にのし上がる!」
「・・・まあ、とにかくがんばってくれ。」
サーレー、大胆なの慎重なのか測りかねる男である。
「ポルポのことだから火の輪くぐりとかバトルロイヤルとかろくでもないのがあると思ったが・・・・・・そんな気配はないようだ。」
「そんなのあったら間違いなく俺は帰るぜ。」
「フッ、昔の悪役の台詞だ。『博打ってのは負けると痛い目を見るからおもしれえんだよ』」
「忘れちまえよ。そんな台詞」
まったくもってそのとおりである。こうして役者はそろった。
栄冠は誰に輝くのか。
泣きを見るのは誰なのか。
この時点で知るものはいない。

to be continued…

前野司様から戴いてしまいました!『チーム暗殺専科・よまそく編!』三周年記念に特別に書いて
戴いたのですよ!うひょー!ありがとうございます!ポルポ主催のクイズ大会!『暗殺チームは貧乏』
というジョジョネット界の基本を踏まえ、500万というはした金を巡って今、暗殺チームの挑戦が始まる!
意外(マイナー)な登場人物!謎が謎を呼ぶ展開!果たして500万はどのチームの手に!?
てかちゃんとクイズ大会は無事に終わるのか!?先の展開が全く読めません!
まだまだお話は続くそうで先が楽しみですわ!次回を乞う御期待!

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前野司様のサイト『ジョジョの奇妙な冒険五部のHP』

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